053270 ランダム
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ヒトヤスミ

一人

   ~一人~

   僕は一人立っていた

   なぜこんなことになっている

   鼻を刺すような腐乱臭

   一歩歩くごとに裸足にまとわりつく黒ずんだ液体

   片手に握られたナイフ

   そして

   もう動くことの無い肉の塊

   
   その時僕は泣いていた

   でも口元は

   笑っていた


   嬉しかった

   死ななかったことが

   
   嬉しかった

   死ななかったことが

   
   ならば僕は燃やし尽くしてやろう
   
   すべての生あるものを壊して手に入れたこの命を

   
   ならば僕は燃やし尽くしてやろう

   親友と呼んでいたものを壊して手に入れたこの命を

   
   この星で生あるのは僕だけ

 
   この星で生あるのは僕だけ


   ふと一つのモノを見る

   そっと頬に触れる

   やはり動かない

   そうだろうね

   これは首から下が無い


   僕は言う

   「ゴメンネ」

   そして

   「アリガトウ」

 
   
   僕は歩き出す

   すべての生を背負って


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